数あるガイドラインの中でも、2004年のヨーロッパガイドラインが別格。
極めて示唆に富むものです。
このページでは、
『 腰痛診療についてのガイドライン 』 (2004年、ヨーロッパ版)
をご紹介していきます。
腰痛の根本の原因は解明されていないが、
『 こういう時は、こうすることを薦める 』 という具体的な勧告が、
エビデンスレベルの高いものをベースにして
まとめられているものです。
しかし、その前にひと言。
実は、腰痛診療のガイドラインというのは、
世界のいろんな国で作っています。日本にもありますよ。
以下、ざっとあげてみますね。
| 1994 アメリカ | 2001 オランダ |
|---|---|
| 1996 イスラエル | 2001 イギリス |
| 1997 ドイツ | 2001 日本 |
| 1998 スイス | 2002 ノルウェー |
| 1999 デンマーク | 2002 カナダ |
| 1999 フィンランド | 2004 ニュージーランド |
| 1999 オーストラリア | |
| 2000 スウェーデン | 2004 ヨーロッパ |
一番最後にあるヨーロッパガイドラインは、
ヨーロッパ14か国から専門家が参加して作成したものです。参加国は、
オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イスラエル
イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス。
このサイトでは、2004年のヨーロッパガイドラインを紹介します。
上記のガイドライン中で、別格の内容だと考えるからです。
その理由を記しておきますね。
急性腰痛だけでなく、慢性腰痛を取り上げている点。
→ 上記のガイドラインは、急性腰痛の対処について書かれています。
慢性腰痛にも踏み込んでいるのは、ヨーロッパガイドラインだけです。
さらに、腰痛の予防法についても、記してあります。
政治的な影響の度合いが低い点。
→ あまり不用意な発言はできませんが。
ロビー活動などで、その内容に圧力がかかるということは、国によってはあります。
『こういう時は、こうすることを薦める』 という具体的な 『勧告』 がある点。
→ エビデンスに基づいて、現時点で最も適切な勧告があります。
ところで、日本版はどうか? というと、一番大切な 『勧告』 がないんですね。
これは致命的だと思います。実際に腰痛患者さんが使えませんから。
研究論文で終わってしまっている、という印象を受けます。
しかも、その内容は、ヨーロッパガイドラインとかなり違います。
日本版・腰痛診療ガイドライン
実物はこれです。英語版です。
2004年ヨーロッパ版・腰痛診療ガイドライン
このガイドラインでは、これまでの腰痛の考え方を劇的に変えています。
これまで腰痛は、物理的・構造的・生物学的な損傷として扱われていました。
具体的には、脊椎の損傷モデルです。
しかし、これでは、どうしても説明できないことが多すぎますし、
実際の治療効果もよくありませんでした。
その一例は、このサイトでご覧くださっている通りです。
ヨーロッパガイドラインは、その考え方とは違います。
腰痛を、生物的・心理社会的な要因からくる痛みの症状としてとらえ、
そのタイプごとに、『勧告』を出しています。
EBMを踏まえた研究の結果から、そうなったわけです。
では、そのガイドラインを、具体的に見ていきましょう。
では、その内容は、具体的にどんなものなのでしょうか。
まず最初に、腰痛患者を診断する時、急性・慢性とも、
「重大な脊椎病変の可能性があるかどうか」 をチェックします。
それには、『 レッドフラッグ 』 というチェック項目を使います。
重大な脊椎病変とは、
悪性腫瘍、脊椎感染症、骨折、解離性大動脈瘤、強直性脊椎炎、馬尾症候群
といったものです。
これらは重大な病気。そのひとつの症状として「腰痛」が現れるわけです。
患者数としては、全腰痛の5%以内で少数ではありますが、
万一それに当てはまっていた場合は、大変です。
『 レッドフラッグ 』は、生物的な要因です。
具体的な項目は、下の通りです。
■ 発症年齢が20歳未満か55歳超
■ 最近の激しい外傷歴(高所からの転落、交通事故など)
■ 進行性の絶え間ない痛み(夜間痛、楽な姿勢がない、動作と無関係)
■ 胸部痛
■ 悪性腫瘍の病歴
■ 長期間にわたる副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の使用歴
■ 非合法薬物の静脈注射、免疫抑制剤の使用、HIVポジティブ
■ 全般的な体調不良
■ 原因不明の体重減少
■ 腰部の強い屈曲制限の持続
■ 脊椎叩打痛
■ 身体の変形
■ 発熱
■ 膀胱直腸障害とサドル麻痺
レッドフラッグに該当した患者には、画像検査や血液検査をして、
「重大な脊椎病変」がないかどうかを調べる ように、
ガイドラインは勧告しています。
あなたの場合は、いかがですか。
もし、何か該当するものがあった場合には、
「重大な脊椎病変」の可能性を否定はできないので、
きちんと検査を受けた方がよいのです。
逆に、レッドフラッグに該当しない人であれば、
まず「重大な脊椎病変」ではないと考えてよいようです。
例外の可能性は、0.04% 程度との報告があります。
『 レッドフラッグ 』 がない場合。
なんと、時が経てば、腰痛は自然に治ってしまうものだ
と、ガイドラインは捉えています。
・・・・・
「はぁ〜 まじめに聞いて、損した〜」 というような声が
聞こえてくるようなこないような。
私の気のせいでしょうか。
「そんなことで治るなら、誰も苦労はしませんよ!」
「それこそ医者は要らないじゃないか!」
そう思われる気持ちは、もっともです。
実際、腰痛が治らないと訴える人がたくさんいるのは、事実です。
当然、ガイドラインは百も承知していますので、
こんな勧告を出しています。
腰痛が長引いている人には、『 イエローフラッグ 』 をチェックします。
『 イエローフラッグ 』 は、心理社会的な要因。
『 心の部分・社会の部分 』 です。
実は、これこそが、極めて重要なポイントです。
次のページで、詳しく記します。
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