心の部分・社会の部分こそが、腰痛の 『 イエローフラッグ 』
この項目には、?? と思われる方も多いかもしれません。
腰痛ってカラダの症状なのに、どうして心の部分? どうして社会の部分?
そこで、腰痛診療ガイドラインを見てみます。
2004年 ヨーロッパガイドライン です。
前ページでご紹介したことは、こうでした。
まず最初に、腰痛患者を診断する時、急性・慢性とも、
「重大な脊椎病変の可能性があるかどうか」 をチェックします。
それには、『 レッドフラッグ 』 というチェック項目を使います。
レッドフラッグに該当した患者には、画像検査や血液検査をして、
「重大な脊椎病変」がないかどうかを調べます。
『 レッドフラッグ 』 がない場合は、
時が経てば、自然に治ってしまう種類の腰痛と考えられる。
つまり、
重大な脊椎病変でないのであれば、
腰痛は、極端に言えば、ほっておけば、自然に、回復しますよ。
と言っている訳です。
私の独断じゃありませんよ。
2004年 ヨーロッパガイドライン が言っているんです。
「根拠に基づいた医療」−EBM− を踏まえて作成された、
極めて信頼できる腰痛診療ガイドラインが、そう言っているんです。
しかし、「私の腰痛は、全然治らないじゃない・・」 とおっしゃる人は、たくさんいます。
その言葉は、もちろん本音であり、真実であるわけです。
それに対して、ヨーロッパガイドラインは、
レベルの高いエビデンスに基づいて、このようなメッセージを発信しています。
重大な脊椎病変でないのであれば、腰痛は、回復すべくして回復する。
回復しなかったり、回復が遅れるのは、
回復を妨げてしまう 「 別の要因 」 があるからだ。
その、「 別の要因 」 というのが、『 心の部分・社会の部分 』 です。
これが、現時点における、エビデンスから導かれた結果なのです。
『 心の部分 ・ 社会の部分 』 は、
『 イエローフラッグ 』 という
チェック項目で把握していきます。
腰痛を回復させるのを妨げている 「 ある要因」 =
『 イエローフラッグ 』 を、ひとつひとつ解決し、無くしていくことで、
その結果として、腰痛がおさまっていく。
という考え方です。
『 イエローフラッグ 』 には、いろんな表現がありますが、
ここでは、そのいくつかを紹介いたしましょう。
あなたにもあてはまるものが、あるでしょうか?
試しに、読んだら2秒くらいで、「はい/いいえ」を即答してみて下さい。
『 イエローフラッグ 』 の内容(抜粋)
★ 腰痛は有害だと信じているか、あるいは痛みへの恐怖心から、
回避行動 (動作恐怖と極端な用心深さ) をとり続けているため、
そのうち車椅子生活や寝たきりになるかもしれないと思っている。
★ 痛みが完全に消えてからでなければ、
日常生活や仕事には戻れないと考えている。
★ 日常生活や仕事によって、腰の痛みが強くなると思っているので、
元の生活に戻るのが不安である。
★ 腰の痛みを消すのは、難しいと信じている。
★ 長い間安静にしたり、必要以上に休息をとったりする。
★ 日常生活動作を避けているため、運動不足である。
★ 0〜10までの尺度で痛みをきかれる時、
10を超えるようなきわめて激しい痛みを訴える。
★ 治療者や治療方法、医療機器に対する依存心が強い。
★ 腰痛を発症してからあまりよく眠れない。
★ 職場復帰に対する経済的動機が乏しい。
★ 生活保護(所得保障)や医療費の問題で紛争していて、
その解決が遅れている。
★ 腰痛以外の傷害や痛みの問題で補償請求をしたことがある。
★ 腰痛以外の傷害や痛みの問題で仕事を3ヵ月以上休んだことがある。
★ 機能回復を目指す治療は行なわずに、安静を指示された。
★ 腰痛に関して異なる診断や説明を受けて混乱した経験がある。
★ 絶望感と恐怖心をいだかせる(車椅子生活を連想させるような)
診断名を告げられた。
★ 受け身的な治療を続けているうちに治療への依存心が強くなり、
腰痛がさらに悪化している。
★ 身体を機械のように考えていて、その修理を求めるような
技術的な治療法への期待感がある。
★ これまで受けてきた腰痛治療に対して不満がある。
★ 仕事をやめなさいというアドバイスを、受けたことがある。
★ 日常生活や仕事によって強くなった痛みに対する恐怖心がある。
★ 抑うつ状態(ことに長期間にわたる気分の落ち込み)があり、
楽しいと思えることがない。
★ 普段から、とても怒りっぽい。
★ 自分の気持ちを抑えられないほどの大きなストレスを感じている。
★ 自分は役立たずで、誰にも必要とされていないと感じている。
★ 配偶者やパートナーが過保護である。
あるいは、痛みに対する恐怖心をあおったり、絶望的な気持ちにさせたりする。
(たいていは善意からのもの)。
★ 仕事を代わりにしてくれるなど、
配偶者やパートナーが熱心に気遣ってくれる。
★ 職場復帰へ向けたあらゆる試みに家族の協力が得られない。
★ さまざまな問題について語り合える相手がいない。
★ 仕事は腰にダメージを与え、危険で有害なものだと信じている。
★ 非協力的で不幸な職場環境で働いている。
★ 24時間交代勤務制、もしくは人が働かないような時間に仕事をしている。
★ 腰痛に対する会社側の対応で嫌な思いをしたことがある。
腰痛になったことを報告するシステムがない、報告が禁止されている、
経営者や上司からの懲罰的な反応など。
★ 会社側が関心を持ってくれない。
・・・・・・・・
どうでしたか?
たくさんありましたね。
質問の内容に、ビックリしませんでしたか。
腰痛とはまったく関係のなさそうな質問もありますから。
こういったことが、腰痛の回復を妨げる
『 イエローフラッグ 』 = 『 心の部分・社会の部分 』 です。
『 レッドフラッグ 』 を除外したのち、腰痛が長引いている人には、
腰痛の回復を妨げている 『 イエローフラッグ 』 をチェックする。
当てはまる項目があれば、ひとつひとつ無くしていく方向でのアプローチする。
これが、2004年 ヨーロッパガイドラインの、勧告なのです。
腰痛診断は、今、劇的に転換しているのです。
ところであなたは、この 『 イエローフラッグ 』 の内容を、
病院で診察を受けた時に、質問をされたこと、ありますか。
整体や鍼灸、マッサージの院などで、質問をされたこと、ありますか。
おそらく、ないのではないでしょうか。
日本においては、2004年 ヨーロッパガイドラインは、ほとんど普及していません。
それどころか、そもそも、腰痛診療のガイドラインがあるということ自体、
ご存じでない医師や施術家も多い様子です。
興味があれば、あなたの担当のお医者さんに、
「ガイドライン」に基づいた診断をしてくれているか、
そもそも「ガイドライン」があるということを知っているか、
質問してみるとよいでしょう。
・・・でも、お医者さんを責めてしまうのは、酷かもしれません。
日々、本当にたくさんの患者さんを診ているのですね。
熱心でないワケではないんです。とにかく、時間がないんでしょう。
しかし、2004年 ヨーロッパガイドラインは、
「 腰痛診療の劇的な転換 」 であるので、
ぜひ知っておいてほしいものです。
心の部分・社会の部分、イエローフラッグ・・
どうも、いまいちピンとこない、という方もいらっしゃるでしょう。
私自身は、はじめてこの概念に触れた時には、
「そうかっ、なるほど、そういうことだったんだぁ! 」 という感じでした。
それまでの臨床経験から、カラダの物理的な構造や機能だけでは、
どうも片手落ちのような気持ちがあったからです。
いくつか、イメージしやすいと思えることを書いて見ましょう。
「ストレスで胃が痛くなる」ことは、誰でも一度は体験しているでしょう。
ストレスが引き起こすカラダの症状は、どこに出ても不思議ではありません。
ストレスで腰が痛くなることは、現代では、ごく普通のケースとなりました。
このサイトを、順番にお読み下さっている方は、
椎間板ヘルニアのMRI撮影写真を、一度ご覧いただいたことと思います。
憶えていますか。ヘルニアの、あの強烈な画像。
こちらです。 → 「 腰部 椎間板ヘルニア MRI 」 で Google 検索した画像
そこでも書きました通り、
椎間板ヘルニアのMRI写真は、ヘルニアが神経を圧迫していて、
見るからに痛そう! です。
・ 腰が痛くて病院に行ったら、MRI撮影をすることになった。
・ その結果は、先ほどのような、椎間板ヘルニアの画像であった。
・ だから、腰痛は椎間板ヘルニアだから起こったのだと、信じた。
→ これが 『 イエローフラッグ 』 です!
その感じ、つかめますでしょうか。
2004年 ヨーロッパガイドラインは、このようなケースも危惧して、
「レッドフラッグがない限り、むやみに画像検査をしないこと」
と勧告しています。
画像撮影は、イエローフラッグを増やすことになりかねませんし、
「一応撮っておきましょうか〜」 なんて発想はあり得ないのです。
※ 以下のページも、ご覧下さい。
椎間板ヘルニアが、腰痛の痛みをひき起こすの?
・・・・・・
いかがでしょうか。
腰痛と 『 イエローフラッグ 』 のニュアンスは、こんな感じです。
次のページでは、2004年 ヨーロッパガイドライン の、
その他の重要な勧告を記します。
次のページへ ・・・ 2004年ヨーロッパガイドライン その他の重要な勧告
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腰痛患者の『心の部分・社会の部分』の大きさ
2004年ヨーロッパガイドライン その他の重要な勧告
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作家・夏樹静子さんの腰痛との格闘の記録
NHKスペシャル 「病の起源」 【 腰痛 〜それは二足歩行の宿命か?〜 】
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